気がつけばあっという間の10月である。本当にばたばたと過ぎていった9月だった。
先ほど東京五輪招致の失敗が明らかに…都民の血税が…とは思うが、正直なところ良かった。オリンピックが東京で開かれなくても開催時期はそれなりに盛り上がるし、現時点でどこになったかは不明ながら、南米大陸初のリオでいいじゃないかと思う。
そもそも、東京五輪は都民および日本国民のコンセンサスがとれていたとは言い難い。落選は妥当な結果のような気がするのは、気のせい?
そんな今日この頃であるが、広島出張の前にジム・ケリー「水時計」(創元推理文庫)を読み終えていたが、出張やら何やらで書けずにいた。
これも、ここのところに好調な創元推理文庫の新刊購入組。創元推理文庫は、引き続き好調なようで、毎月のように書店で新刊に手が伸びる状態だ。
さて「水時計」であるが、あのコリン・デクスターが絶賛する英国本格の期待の新星ジム・ケリーのデビュー作。もともと新聞記者から作家になったというイギリスではありがち?な経歴の持ち主である。
で、本作の主人公ドライデンも地方新聞の記者で、作者の経験が生きているのだろう。
イギリス東部の湿地と大聖堂で有名な町イーリーで、寒い11月のある日、川に沈んだ車のトランクから射殺された男の死体が発見される。そして、翌日には修復中の大聖堂の屋根の雨どいから白骨死体が出てくる。
川から出てきた死体は身元不明、大聖堂の白骨は英国W杯の決勝の日に起こったガソリンスタンド強盗事件の容疑者のものと判明する。
小さな町で起こった2つの殺人事件の裏に記者の嗅覚が黙っていなかった。2つの事件を追いかける地方紙「クロウ」の記者ドライデン、相棒となるのはデブのお抱え?タクシー運転手ハンフ。
30年前の事件に絡んだ人間模様が少しづつほどけて明らかになっていく様とドライデンの心の傷という暗部に、ユーモラスなハンフのキャラクターがスパイスとなり、良い意味で実に英国ミステリらしい。読みごたえもあり、手堅い作品で、次なるドライデンものが愉しみである。
次は、お待ちかねのF.P.ウィルスンの帰ってきた「ジャック」、上巻の中盤ながらすでに面白い。これだから「ジャック」は止められない(笑)のである。