D.ベニオフ「卵をめぐる祖父の戦争」読了

city_of_thieves.jpg ビンボウヒマなしとはよく言ったもので、儲かっているわけでもないのにバタバタとしている。出入している会社も売上さっぱりで来年度はどうなってしまうのやら…といった状況である。
 とはいえ目の前にある受けた仕事は、できるだけよい形で進め納めねばならないことに変わりはない。

 そういった日々ではあるが、読書の方は比較的快調。昨晩、ベテランの方の送別会からの帰りの電車にてデイヴィッド・ベニオフ「卵をめぐる祖父の戦争」(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)を読み終えた。
 これは、新装なったポケミスの第一弾作品、発売日に書店で一度手にとったが、装丁はもちろんあらずじもこれまでのポケミスとはちょっと違った印象もあったりで見送っていたのであるが、これまたいつものsugataさんから“いい冒険小説”とのアドバイスをいただいた。で、読み始めてみるとこれがお言葉に違わぬ実に“いい冒険小説”であった。
 ストーリーの舞台は第2次世界大戦中のレニングラード(現サンクトペテルブルグ)、そうあの歴史上最大の包囲戦と呼ばれたレニングラード攻防戦最中のレニングラードである。
 主人公は著者デイヴィッドの祖父レフ(ということになっているが…)と脱走兵?のコーリャの2人、この凸凹コンビが銃殺刑を逃れるために赤軍の大佐から極秘裏?に命令された卵1ダースを手に入れるための冒険?を繰り広げるのである。

 大胆で奇抜なライトキャラのコーリャと何かと臆病で慎重なレフ、状況がそうさせるのか正反対のキャラクターがお互い補いながらナントカカントカ次なるステップへと生き延びていく。
 次々に振りかかる苦難はとても困難そうだし、とても重いはずなのだが、そこらあたりがベニオフの持ち味なのか、とても軽妙洒脱で暗くならない。
 そのうえ2人の会話の行き着く先がセックスときている。そんな極限状態に置かれても思春期前後のワカモノの心のすべてがソコへとつながっていることに苦笑する。

hpm1838.jpg とはいえ、彼らの行く手にはほとんど希望はない。行き当たりばったりを繰り返しながらドイツ軍部隊に潜入し敵の司令官?と対峙することとなる。
 その結末はなんとも切なくほろ苦い。たかが卵1ダースに命をかけて振り回される青春冒険小説である。

 いくつかの評にもあるように、結末まで読み終えてもう一度プロローグを読むとより味わい深いのであるが、言い方を変えればプロローグによ~く注意を払って読んでおくのもいいのではなかろうか…。
 原題は、“City of thieves”なのであるが、それよりも邦題の「卵をめぐる祖父の戦争」のほうがしっくりときている。

 これまた各所で書かれているが、新しいポケミスの夜明けを告げるという面からもとても意味深い作品だと思う。読んで損なし。
 これまで無かったトレードマークらしきものの中に記された「1838」が眩しいぞ。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中