D.ゴードン「二流小説家」、A.ルースルンド、B.ヘルストレム「死刑囚」読了

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 地震の余波は続くものの、被災地の厳しさを気には留めながらも変わらぬ日常にかすかな不条理も感じてしまう日々。
 年度末の山を越えたと思えたが、駆け込みの仕事がバタバタと入って思わぬ展開となっている。
 そんななか、読書は以前のペースにすこしづつ近づきつつある。先週末にデヴィッド.ゴードン「二流小説家」(ハヤカワポケットミステリ)を、その前には、A.ルースルンド、B.ヘルストレム「死刑囚」(武田ランダムハウス文庫)を読了。
 そろそろ昨年10月の潜航宣言からの浮上もしつつといったところを目指したい、まだまだ数冊書いていない読了本はあるが、目の前の…ということで。

 まずは、D.ゴードン「二流小説家」、新装丁となったポケミスも順調に巻を伸ばしているが、どうやらニューカマーに力を入れてきているようで、この作家も新人ということである。
 いろいろな形で執筆活動を続けてきたようで、満を持して発表したのが本作、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作ともなった作品である。
 主人公のハリーは、ポルノ雑誌のライターやら中途半端なミステリ、エロいSFやヴァンパイアものなどをいくつもの筆名で執筆する二流小説家。そんなハリーに獄中の連続殺人犯から告白本の執筆依頼が舞い込んでくる。

 その依頼に飛びついたのが、彼のマネージャクレアとはいえ彼女は、彼がアルバイトで家庭教師をつとめる金持ちの女子高生であるが。
 殺人鬼ダリアンは、ハリーに自分のファンの女性と会い、その女性を登場させた短編を書くように指示、女性たちにインタビューを試みるハリーであったが、合う端から女性が獄中の殺人鬼と同様の手口で殺されてしまう。
   そのうえ、以前の被害者の遺族からは「作品」の執筆を止めるようにいわれる始末、しかし被害者の双子の妹は、執筆を続けるようすすめるのであった。

 当然、ダリアンが真犯人なのか、それとも別に犯人はいるのか?新たな殺人は、いったい誰の犯行なのか…?ダリアンを捕らえたFBI捜査官やら、ダリアンの弁護士やら、そのアシスタントやら被害者のダンナやらが絡んできて、話は複雑な様相を呈してくるのであった。

 その連続殺人鬼という言葉の印象とは裏腹に思いのほか軽い展開で、やや肩透かしを喰らうが、やがて明らかになる真相は意外で、なかなかストーリー巧者ではあることは間違いない。
 ただ、間に挟まれるハリーが書いたハードボイルドやSFの架空作品がいるのかどうか疑問だし、前半のハリーと周りの人物とのやりとりもそんなにページは必要ないのではなかろうか…。
 もっと、ダリアン的なものを中心してもなどと…考えると、それこそ平凡な作品にとどまったのか…。まあ、十分楽しませては貰った。


shikeishu.jpg こちらは、正真正銘の問題作。「制裁」、「Box21」に続くストックホルム市警警部グレーンスものの第3作、毎度このシリーズは違ったテーマで描かれ、かなりな読みごたえのある作品なのであるが、本作は死刑という重いテーマを軸にこれまた骨太な作品となっている。

 フェリーの船上で暴力を振るって逮捕された男は、スウェーデンに移住してきたカナダ人のはずであったが、その素性をたどるとこの世に存在するはずのない男だった。
 なんと6年前に米国の刑務所で死んだはずの男で、そのうえ死刑囚なのであった。

 なぜ、そんな男が生きてスウェーデンで逮捕されたのか…死刑を廃止したスウェーデンと政治家のコンサルタントを務める被害者の父の力もあって男の引き渡しをせまる米国。
 取り調べの中、男になにか特別なものを感じるグレーンス。
 男が収監されていた刑務所のベテラン看守、男の父親、そして被害者の両親の6年前と現在を交えながら展開する。男は本当に恋人であった少女を殺したのか…。
 
 やがて、男はロシアを経由して米国に引き渡され、刻々と死刑執行の日が近づいてくる。そして、厳かに死刑が執行されるのであるが、話はここで終わらない。
 さらに驚愕の展開が待っている。これ以上書くとネタがバレそうになるので、この辺にすることにして、人が法律の名のもとに人の命を奪う、これが本当に許されるのか…そして、遺族の心はそれで満たされるのか。
 さまざまな人物の心理が絡み合いながら進み、そこも読みごたえはあるのだが、その辺をここでごちゃごちゃ下手な文章で書いても仕方がないほどの結末が待っている。

 提示された問題に対する回答が、恐ろしいほどの重さをもった結末で示されるのだ。その回答が正解なのか否かは、読むものにゆだねられるのである。失われた命と今生きているものの命、そしてそれを裁く人。
 胸にずしりと来る、読んで損のない作品だ。

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