J.トンプソン『血の極点』(集英社文庫)読了

先日、古書店でゲットしたJ.トンプソン『血の極点』(集英社文庫)を読了。

フィンランド警察カリ・ヴァーラシリーズの最終巻。最終巻と書いたが、話が終わったわけではない。トンプソンが急死したためこれが最終となった次第である。

今回も弱きを助け、法の隙間と敵の弱みを突いた攻めでフィンランド社会の悪を挫くヴァーラたちであった。
ただ前作までの流れを引き継ぐ展開が長い。今回のお話がなかなか始まらない、そのうえ解決までが思いの外タンパクなので物足りない。

ゆくづく、いよいよヴァーラが警察官として本格的に法で裁けないヤカラを切りまくる立場になって…というところで次作がのぞめないのが残念。

日影丈吉の『幻影の城館』(河出書房)読了

 ここ何年か読書のしかたが変わってしまった。以前はつかれていても寝る前のや電車の中での読書が気分転換だった。
しかし、今では布団に入って本を広げるとすぐに睡魔が襲ってくるし、移動中の電車の中もなんとなく周りの会話や音が気になってしまう。

昨晩、久しぶりの日本人作家日影丈吉の『幻影の城館』(河出書房)を読み終えた。さまざまな時代の作品全11編収録の河出書房オリジナルの傑作選。
どの作品も日影節というか、独特の不思議な感覚に包まれた作品が並ぶ。最後にドキッとさせる「オウボエを吹く馬」に始まり、あるときはノスタルジー、そしてあるときはエロティシズム、そして謎解きと著者のさまざまな面が楽しめる。

幾つかの作品集を読んでいるが、どの作品未読、この一週間忙しいなかでも楽しめた。
もう一冊、日影集が出ているようだが、そちらは既読作品が多そうだ。

M.ヨート&H.ローセンフェルト『模倣犯』<上><下>読了

 毎年のごとく年度末から年度初めにかけては、バタバタで終始。当然、読書も気持ちよくはかどらずとなっている。先週、半月をかけてなんとか、M.ヨート&H.ローセンフェルト『模倣犯』<><>を読み終えた。
 面白いには違いないのだが、なにせ気持ちが小説世界にじっくりとはいかず、ちょっと読んでお休み…を繰り返す状態が続いた。なんとか下巻に入って、展開も激しくなるし、コチラも少し気持ちが入ってスピードが上がった。
 
 嫌キャラのセバスチャンが、名を挙げるきっかけとなった連続殺人事件の手口を真似たと思われる事件が発生。元の事件の犯人ヒンデは服役中で実行は不可能だ。
 セバスチャンはクビになったはずの捜査チームに押しかけ復帰、事件解決に取り組む。
 前作で明かされた衝撃の事実?が、展開のキーにもなっているので、ネタバレになるためアレコレ書けない。
 「ヴァランダー」や「The Bridge」の人気TVドラマの脚本を担当しているだけあって、読み気をつなげるところは流石だと思わせる。
 ラストも次作?へのブリッジも配置されて、次が待ち遠しい憎らしいエンディング。
 
 読んで損はないが、前作から読むのが必須だ。

P.ルメートル『悲しみのイレーヌ』(文春文庫)を読了

 今日は、昼間に荻窪の回転寿司へ(笑)意外や意外、リーズナブルで思ったよりもうまかった。

ところで、先週のうちにP.ルメートル『悲しみのイレーヌ』(文春文庫)を読了。年末から年度末にかけてのバタバタで読書エンジンは出力不足でスピードダウン中。
本作も思いのほか時間がかかってしまって、作品自体のテンポを体感できないままになってしまった。
とはいえ、内容は文句し。まあ、『アレックス』を読んでいるので分かってしまっている部分もあったり、なんとなくコイツじゃね…と思ってしまったりするのであるが、過去のミステリーに対する思いも盛り込まれて、ニンマリしたりする。

できれば『アレックス』より本作を先に読むことをお薦めする。

フェルディナント・フォン・シーラッハ『禁忌』読了

 先週のうちにフェルディナント・フォン・シーラッハの『禁忌』(東京創元社)を読了。
通常のミステリと呼ぶには無理のある展開であるが、事件が起こり、裁かれる者、裁く者、弁護する者が登場する。

主人公?エッシェンブルクは、貴族の末裔で特殊な色彩感覚を持った写真家である。前半は彼の生い立ち、その後は検察、弁護士、裁判の経過が描かれる。
もちろん事件が起こり、エッシェンブルクは逮捕され、自白し…という展開。
何かを書くとネタバレになりそうなのでここまでとする。

相変わらずするどくシンプルな文章、原文もそうなのだろうが、翻訳の酒寄さんの力もあるのだろうと毎度痛感する。
当然、エッ?となるような結末も…難解といえば難解、シンプルといえばシンプル、今回もシーラッハの罠に嵌まるのであった。

ベン・H・ウインタース”ラスト・ポリスマン”3部作読了

Last_Polisman 一週間ほど前に読み終えていたのだが、なかなか落ち着かない状態で先送りになっていたベン・H・ウインタース ”ラスト・ポリスマン”3部作。
 『地上最後の刑事』、『カウントダウン・シティ』、『世界の終わりの7日間』(いずれもハヤカワ・ポケットミステリ)。

 舞台は、いつとも知れない近未来?の地球。ニューハンプシャーで刑事となった男ハンクが主人公の連作である。
 第一作は、マクドナルドのトイレで自殺したとみられる男の事件にあたる。ハンクは、殺人として事件の捜査するのであるが、世が世なだけに警察の熱意は低い。なぜなら地球は数カ月後に小惑星”マイア”との衝突でカタストロフを迎えるのである。

 2作目は、知り合いの女性からダンナを探して連れ戻してほしいと依頼されるハンク。これまた一人で事件に取り組む。

 3作目は、ある種の反政府?的グループに参加した自分の妹を探すたびに出るハンク。

 3作とも日に日に滅亡へ向かって突き進んでいるのであるが、思いのほか穏やかな日常の延長が描かれるが、流石に3作になると各所で多少アナーキーな状態もでてくる。
 とはいえ、そこらじゅうでパニックとなって…というようなことはない。

 終末へ向かうことを大筋受け入れながら、日々できる範囲で生きていくハンクや周囲の人々の姿が、淡々と描かれる。
 正直、どんどんエスカレートして破滅へ向かう恐ろしい世界を予想していたのであるが、基本は人間と家族を描く地に足の着いたミステリーである。

 もっと早く読みたかったのだが、古書で第2、3作を入手後、第一作がゲットできずにいた。後半、ちょっとバタバタで思いのほか時間がかかったが、評価に違わぬ作品だ。

D.M.ディヴァイン『そして医師も死す』読了

Doctor_also_die  昨日、イッキに読了したのがD.M.ディヴァイン『そして医師も死す』(東京創元推理文庫)。
 年末のバタバタの中、なんとなく読書の巻き返し、実はこのところの本はほとんど古書でゲット、これもそう。

 ディヴァインの第2作、地方都市の病院の共同経営者が不慮の死を遂げる。その死は殺人、医師のターナーに疑いをかける者が…。
 ターナーの語りでストーリーは展開する。彼と死んだ医師をめぐる複雑な人間関係が、描き出されていく。
 典型的な英国ミステリーで、じっくりと背景が描かれていることもあって、多少イラっと来るところがないでもないが、これは1960年代に書かれた作品ということもあって、最近のジェットコースター的展開とはいい意味で程遠い。
 ゆったり、じっくりと愉しむことを意識したら、イッキに残り半分を読み終えた。

 これでディヴァイン作品を読むのは、8作目で全部創元推理文庫もの。その前に今はなき教養文庫での作品があるのだが、きっと残りも東京創元社が出してくれるだろう。
 ちなみに、”このミス”の今年の16位である。