A.インドリダソン『湖の男』(東京創元社)読了

 ここのところ年度がかわってひと段落している…というか、何も動いていないという状態。
ここぞとばかりに溜まっている積読本に取り組んでいる、とはいうものの既に読み終えている7冊分をほっぽらかしてなのだが…。

で、アーナルデュル・インドリダソン『湖の男』(東京創元社)である。
アイスランド警察刑事エーレンデュルシリーズの日本第4弾、前3作に続いて非常に重い、読後にずしりとくるうえにアイスランドの空のようその重い雲が晴れることはない。

干上がった湖の底から現れた白骨、頭蓋骨には穴が空き、それはソ連製の盗聴器が結び付けられていた。
その盗聴器から冷戦時代のスパイがらみの殺人か…と容易に想像がつくのだが、そう簡単には終わっるわけはない。
エーレンデュルたちの地道な捜査で少しづつ少しづつ「湖の男」の姿が見えてくる。その間に間に「湖の男」に結びつく 鉄のカーテンが引かれて間もない東ドイツのライプチヒでの学生生活が、描かれる。
共産主義の光と影が「湖の男」にまつわる悲しい人生を生み出していた。

少しづつ明かされる真実に読む側の気持ちははやるがのだが、その速度が上がることはない。根気強く進められるエーレンデュルたちの捜査に投げそうになる人もいつかもしれないが、それは毎度のこと。
やがて、積み重ねられた先に真実が姿をあらわすのだ。さらに、知らなかった冷戦時代のアイスランドという国についても少しだけ分かる。

今回も全3作と同様、読み応え十分だが、ただいわゆる読後のカタルシスはない。

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新宿レコード ユニオンオープンと本日のCD


昼に新宿に寄れるタイミングがあったので、本日オープンの新宿ユニオン・レコードをのぞいてみたら…、かなり人が一杯でエサ箱を見る気にもなれず。
レジも列ができていた。心の底の底でなんでここまで今さらレコードが…と思ってしまう今日このごろ。
本当の目的は、ユニオンの新宿本店でYoutubeで見て、あらためて衝撃を受けたカルメン・マキ&OZのCDがあればと寄ったついでのユニオン・レコードであった。
で、買ったのはバーゲンプライスのMakin’ Timeの”Rhythm! The Complete Countdown Recordings”とLe Ormeの1st.

Makin’ Timeの方は、アナログで持っている”Rhythm and Soul”全曲を含むCountdownレーベル時代を完全収録。
Modsリバイバルの弾けるリズムと熱いオルガンが気持ち良し。
オルガンとVo.のFay Hallamは、お気に入り。

Le Ormeは、EL&Pタイプのイタリアン・プログレ・バンドとして日本でも人気があるのだが、そこはあまり…そのかわりこの1st.はおサイケでPop。知らなかったが、これはいい。

レコード・コレクターズ 2018年5月号


毎月、書店で必ず手にとって見る雑誌のひとつがレコード・コレクターズ。

特集が気にはなっても雑誌は増やしたくないので、ここのところはほとんど見送りとなっていたが、今月は「1968年の音楽地図」ということで、アメリカとイギリスの音楽シーンとアルバムを中心に日本ほかの50年前を紹介。思わずレジへ。
来年も1969年の50周年を狙っているようだ。

Linus Of HollywoodのNew Album”Cabin Life”


本当に久しぶりの新譜CD購入。
今月2日にオーダーしたLinus Of HollywoodのNew Album”Cabin Life”が本日到着(本当は昨日)。ステッカーのおまけ付き。
いつものように弾けるようなポップミュージック集。

これもクラウド・ファウンディングでの制作・発売。いよいよミュージシャンがレコード会社に頼らずに音楽制作をする時代になった。
これもCDはAmazonでの扱いもない、物理的なCDやレコードを手に入れるには、直でのオーダーがメインになるときは来るのか?

河野典生『さらば、わが暗黒の日々』(集英社文庫)読了

 少し前に読了も書けていなかったもののその七、河野典生『さらば、わが暗黒の日々』(集英社文庫)。
とりあえずタイミングができたので続けてアップしておこう。

オリジナルは、昭和52年(1977)の双葉新書。
物語の舞台は、インドネシア・バリ島、州都デンパサールを仕事で訪れた旅行代理店社員の森田は、幾つかの怪しい組織の抗争の渦の中に巻き込まれていく。

たまたま前に読んだのが『ゴメスの名はゴメス』で、時代こそ違うが舞台は、東南アジア。そして、暗躍する組織…と違ってはいるが、やや錯綜しないでもない状況となってしまった。

やがて、森田自身が誘拐され、軟禁される。なぜ自分がこのような目に合わされるのか理解できずにいたのであるが、彼を送り込んだ人物の過去に、その秘密が隠されていた。
現地警察、民族音楽の楽団、オーストラリア人の富豪、そして日本で死んだはずの女…が絡んで、戦争の産物とも言える鍵を巡って、陰謀が繰り広げられるのであった。

主人公が誘拐されてからの展開が、ちょと物足りない気もする。今ならもっと暴力的で激しい展開になっていたかもしれない。
多少風景は変わっているかもしれないが、是非訪ねてみたくなった、この世界に近いものを感じられたら面白い。

高校だったかの頃、ラジオの朗読かドラマで同じ著者の『デンパサールの怪鳥』を聴いたことがあった。東南アジアへの日本企業の進出や旅行が本格的になっていった時期だったんだろう。

結城昌治『ゴメスの名はゴメス』(角川文庫)読了。

 風邪やら雪やら…書くと書いて書けていなかった少し前に読了もののその六、結城昌治『ゴメスの名はゴメス』(角川文庫)。
 これは昨年の青森出張の際の空き時間に書店でゲットしていたもの、お値段は100円也。

 1962年初出のスパイ小説である。たぶん結城作品の代表作の一つといえるだろう。
 タイトルには、強いインパクトがあって、いつとは言えないが、若い頃からずっと頭のなかに焼き付いていた。全くどうでもいい話であるが、”ゴメス”という名前を聞くと勝手に頭のなかで”…名はゴメス”となるくらいだ。

 舞台はベトナム紛争真っ只中のサイゴン(ホーチミン)が舞台。とにかく当時のベトナムはややこしい、ホーチミン率いる共産主義勢力、フランスが後ろ盾のバオダイ政権が北と南に並び立っている状態。
 さらに、腐敗の進んだバオダイ政権は、アメリカから煙たがられディン・ディエムを大統領に据えることになる。
 そんな状況の中、行方不明となった前任者香取の後を受けて当地に赴任してきた日南貿易の「わたし」。
 香取の身の回りの世話をしていたリエンという若い女、混血ダンサーのヴェラ、向かいのビルの会社の男、同じアパートに住む男…そして自分のアシスタントといった正体の知れない人間たちに、南国の熱気が当時の怪しいベトナムの雰囲気を煽る。
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日影丈吉『真っ赤な子犬』(徳間文庫) 読了

 少し前に読了も書けていなかったもののその五、日影丈吉『真っ赤な子犬』(徳間文庫)。
 ここのところ結城・日影・笹沢・河野でまわしている感じになっている我が読書である。今回は日影丈吉。

 オリジナルは、昭和34年(1959)の桃源社版とのことで、1982年に徳間文庫化されたもの。
 生きる気力をなくした五ツ木守男が、自らのために用意した毒入りステーキ、それを元婚約者の父親である国務大臣が食べてしまった…というのが事件の始まり。
 関係者周辺に現れる赤い子犬とは一体…、さらに雪の中の軽井沢のホテルで五ツ木たちに関係する人物が殺される。

 ただ、この強烈な「赤い子犬」というタイトルのインパクトの割に、これまで読んだ氏の持ち味の幻想的でちょっとザワつくような雰囲気は、本書に期待するのは難しい。
 かといって物足りないかといえば、登場人物たちもなんとなくユーモラスで、会話も意外に軽妙で洒落ている。さらに日影氏のお得意の料理も少し織り込まれてちゃんと日影ミステリーとして愉しめる作品。

 お次は、青森でゲットの結城作品『ゴメス…』だ。

結城昌治『炎の終り』(角川文庫)読了。

 少し前に読了も書けていなかったもののその四、結城昌治『炎の終り』(角川文庫)。
 くどいようだが、昭和期ミステリーにハマっている、特に結城昌治がお気に入りである。

 この『炎の終り』は、日本のハードボイルドの嚆矢ともいえる私立探偵真木シリーズの第3作で、最終作。
 これまで同様真木は、失踪人の捜索を依頼される、今回の依頼人は引退状態の元女優青柳峰子。そして対象者はその娘由利。
 由利はヌードモデルなど派手な振る舞いで早めに見つけることができるのであるが、それをきっかけに殺人事件が起こっていく。

 いつものように事件の背景には歪んだ欲望や複雑な人間関係がうずまき、悲しい愛に生きた女優とひとりの男の過去が浮かび上がる。
 真木はその渦の中をさながら高見から見つけるがごとく淡々と真相へ進んでいく。
 これでシリーズが終わってしまうのが実にもったいない。この先も十分展開できる余地はあったと思うが、著者は真木を書ききったと下のかも知れない。

 車の普及、映画・芸能、薬物…新しいライフスタイル?今となっては当たり前であったり失われたりの者たちに時代の香りを感じながら楽しませてもらっている。
 そうしているうちに次も読み終えたので、また残りは3冊と変わらず。

見よ、日本の印刷技術を。

 コイツはすごい!見よ、日本の印刷技術を。

 日本のお札に散りばめられた微小印刷も凄まじいのだが、今年の日本郵政の年賀状(全タイプではないみたい)のスタンプ部分の隠し?印刷も結構すごい。
 スキャナーで拡大スキャンしてなんとか読めるくらい。

 急いで確認せよ!

結城昌治『あるフィルムの背景 ミステリ短篇傑作選』(ちくま文庫) 読了

  少し前に読了も書けていなかったもののその三、結城昌治『あるフィルムの背景』(ちくま文庫)。
 なんというタイミング!ちくま文庫から日下三蔵氏の編集でマイ・ブーム結城昌治の短編集が11月に出ていた。
 表題作は昭和38年(1963)の発表、その後1970年代に本書第一部の7編とともに短編集として角川文庫から出版されたもの。
 本書はさらに角川文庫の『葬式紳士』収録の4編と『温情判事』の表題作を追加したお得?な新編集版。

 これまで読んできた長編も気に入っているのだが、本書に収められた作品は手元でスッと伸びるというか、食い込むというか…終了間近な平成にあってもまさしくハマっている。
 腰巻きにある通り「ハマりすぎて緊急刊行 昭和に書かれていた極上イヤミス見つけちゃいました」なのである。

 表題作は、ブルーフィルム(いまでいう裏ビデオ)の妻に似た出演者を見てしまった検察官がその裏を探って見たものは…その他、レイプに対する思わぬ形での復讐、ネグレクトされた少年の心の闇、DVから老いへ至るまで半生をかけた復讐、研究者の富と名声にかける欲、とにかくどの作品も「極上のイヤミス」。

 ブルーフィルムやバスの車掌、前の東京オリンピックといった流石に書かれた時代のアイテムなどに時代を感じさせるものはあるが、登場する人物たちの欲望や心の闇は、現代社会でも錆びることはない。
 「極上のイヤミス」に偽りなし。

 書けていないのもあと3冊、いつ追いつくか…