チャールズ.L.ハーネス「パラドックス・メン」読了

 ある一部で盛り上がっている?チャールズ・L・ハーネス「パラドックス・メン」(竹書房文庫)を日曜に読み終えた。
 SFジャンルでは、永遠の幻本で永らく翻訳が待たれていた作品、大風呂敷を広げてスーパーアクションが繰り広げられる(そのスジの人には怒られそうな表現だが)ワイドスクリーン・バロックの嚆矢といわれている。

 時は西暦2177年、地球はアメリカ帝国と東方連邦(中国?)の二大勢力支配となり、地球を飛び出した物語は太陽系を股にかける。
 <盗賊>と呼ばれるねずみ小僧次郎吉結社が現れ、支配階級から金品を奪い、奴隷を開放する。<盗賊>は、弾丸を無力化できるので、帝国警察は銃だけでなく特殊なサーベルを佩いている。
 帝国を支えるエネルギーは、太陽探査で得られた超元素ミューリウム等々、そこら中にSFごころをくすぐるアイテムが散りばめられ、それらが若干の無理をはらみながら絡み合っている。
 自らのアイデンティティを失った主人公 盗賊アラール、帝国の実力者ヘイズ=ゴーントを始めとする敵たち、そしてゴーントの妻ケイリスと一癖二癖ある登場人物が絡む。
 怒涛のように展開した風呂敷は、最終的に時空を超え哲学的な要素でクシャクシャにされて…。

 確かに疾風怒濤の展開にグイグイと読み進められた、面白くもあった。確かにワイドスクリーン・バロック?大風呂敷が嫌いでなければアリである。

 個人的には、若き日に読んだベスターの「虎よ、虎よ!」の衝撃を超えてはいないというのが実感。

 とはいえ、面白かったので彼の多分本邦初紹介?「現実創造」掲載のSFマガジン 1964年7月を入手して読んでみた。
 こちらは、ワイドスクリーン・バロックとは程遠い、科学と哲学をキーにしたストーリー、これはこれで悪くなかった。

 SFマガジンのほうは、映画「博士の異常な愛情」の広告や紹介、当時としては大型の記憶装置の実用化や円盤型潜水艇構想、心臓ペースメーカーを取り上げたコラム等、興味深く楽しんだ。
 久しぶりのSFをどっぷり楽しんだ。

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