土屋隆夫『危険な童話』を読了

  日曜の夜に土屋隆夫『危険な童話』(光文社文庫)を読了。
前に読んだ結城昌治の『罠の中』とほぼおなじ年代の1961年の作品。

舞台は、長野県上田市、仮釈放となった男が音楽教室の教師江津子の家でナイフで刺されて殺される。警察は、状況から江津子を容疑者として操作を進めるのだが、かたいアリバイと見つからない凶器に阻まれるのであった。

上田署の木曾刑事は、江津子を拘束して取り調べを進めるが、アリバイ・凶器はおろか動機もアキ赤にすることができない。やがて、別に犯人が居るかのごとく犯人しか知らない事を記した別人の指紋が付きの手紙が送られてくる。

現在の捜査技術を使えば明らかになる部分もこの時代の技術では、事件解決の曖昧な緒にしかならない。木曾刑事の執念と地道な操作によって、一歩一歩謎が解かれていく。

各章の冒頭に挟まれる自殺した文学青年作の童話が鍵となる文学的な試みも…。そして、明らかにされる驚きの背景と悲しい過去。

アリバイも凶器消失のトリックも今となっては、ほとんど使うことが難しいものであるが、そのノスタルジーと交錯する登場人物の思いが、心に響く。

やや残念なのは、このカバーのデザインが?なところか。

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